皆さんこんにちはポンドパーソナルジムの三浦です。
本日は人間がジャンプする時や、歩く時、走る時、方向転換に重要なバネの力についてのお話です。
私たちが「バネの力」と言っている事は、アキレス腱によって生み出される「弾性エネルギー」を上手く利用する事、その反動を利用した動きを、Stretch-shortening-cycle(SSC)と言います。
しかしこのメカニズムを当時私は「アキレス腱とふくらはぎが一緒に伸びて、伸張反射をしている」と勘違いしていたのですが、学ぶと違うことが分かりました。
今回はそんなバネの動きのメカニズムとふくらはぎとアキレス腱の中身の動きについて触れていきます。
目次
歩行、ダッシュ、ジャンプ動作中に起こるストレッチショートニングサイクル (SSC)とは?
ストレッチショートニングサイクル(伸びてー縮むサイクル)には3つの局面があります。
①伸張性局面(吸収)、②償却局面(神経伝達による遅延)、③短縮性局面(力発揮)
下のバレエダンサーのジャンプ動作の動画を見てください。
このジャンプ動作にストレッチショートニングサイクルの3つの局面が隠されています。
①伸張性局面とは
ふくらはぎの筋肉には「※予備緊張」が働きながら少し伸張していき、ふくらはぎの緊張(固定)によりアキレス腱が伸び弾性エネルギーが蓄えられます。
※予備緊張とは
筋肉が活動を開始する前に事前に軽く緊張して、次の動作の準備が行われている状態
②償却局面とは
伸張性局面(衝撃の吸収)と短縮性局面(力発揮)の間にある局面です。衝撃を吸収して、次に力を発揮するまでには神経伝達の時間が必要です。
そしてこの局面の時間が長くなると①で貯めた弾性エネルギーが熱として失われ、③の短縮局面で伸張反射を活かして効率よい筋活動ができません。
そのためこの償却局面はできるだけ短い時間に収めないとエネルギーを上手く転換できません。
③短縮性局面とは
「①と②で貯められたエネルギーを放出+収縮エネルギー」を合わせて力を発揮します。
ジャンプ中や走行中に起こるストレッチショートニングサイクルでは、筋肉はそれほど伸びたり縮んだりしません。
実は強力な腱が伸びて縮む事で、力を伝達してくれています。
そのためふくらはぎを最大限伸ばしたり、縮めたりするトレーニングと実際の動きは
異なるので分けてトレーニングする必要があると考えています。
アキレス腱の弾性エネルギーが一番効率良く使われる状態は?
図の中で一番アキレス腱のバネを活かせるのは3つのどれでしょうか?
①ふくらはぎが伸びている状態 ②ふくらはぎが固定している状態 ③ふくらはぎが収縮している状態
thinking time …
これは「アキレス腱単体で考えた時にバネの力を最大に活かす」と考えると③が正解です。
しかし実際の動作では②番が正解です。
①番のふくらはぎが伸びている状態だとなぜアキレス腱が効率良く活かせなくなるかは、筋肉が伸びてしまい、アキレス腱の伸びる長さが減少するからです。
実際の動きでは②番のふくらはぎが固定された状態(予備緊張)で、アキレス腱がより伸びる事で力を効率よく伝達する事が可能になります。
仮に図の③番のようにふくらはぎが最大収縮している状態で地面に接地するとつま先立ちのような状態になっているので、アキレス腱が伸びすぎて耐えれなくなり、怪我をしやすくなります。
そのため怪我防止のため、ジャンプ動作の着地では、足裏全体で着地すべきです。
ふくらはぎ、アキレス腱が硬い方は注意が必要。
※極端に説明しているので、必ずしも図のような動きになるわけではないですので注意してください。
ふくらはぎやアキレス腱が過度に硬くなってしまっている方は、トレーニングや普段の運動をする際には負荷が高い運動は控えましょう。
エアロバイクやウォーキングなど強度の低い運動でウォームアップを10~15分程行い、ふくらはぎの軽めの運動やクールダウンにて無理のない範囲でストレッチを行うようにしてください。
~ちなみに~
100m走のトップ選手たちのふくらはぎを収縮させる筋肉は、一般の選手の方と比べて実はあまり大差がない。
実は100m走のトップスプリンターと一般の選手と比較してのふくらはぎを収縮させる収縮速度や力はそこまで大差がない。
スプリントスピードが速い選手ほど、足関節の角度変異が小さく、膝関節伸展速度や足関節底屈速度が有意にひくいことが示されている。(JATIトレーニング指導者テキスト[実施編]、p112より引用。)
100m走のトップスピードの局面では、速く走る上で力を生んでいる要素として股関節周りの筋肉であり、足首は固定させ、バネの力を活かすように股関節と連動させて動かせるのがベストと言えます。
つまり100mのトップ選手達は「股関節で地面を蹴る力(股関節伸展筋)を中心にした身体の使い方」と「足首の固定力」が凄いという事です。
しかし、初めのスタートダッシュについては、上半身が前傾して膝の角度が大きくなるので、前もも(大腿四頭筋)が使われやすくなり、また身体の使い方が変わります。
100mのトップ選手たちはスピードが速くなるにつれ、膝と足首の角度の変化が少なくなり、「固定」している。
現在陸上競技で「足首を固定しなさい」と言われる理由はここにあります。
股関節の力を使い、足首を固める使い方ができればより速く走れるようになります。
ふくらはぎで地面を押すのはやめましょう。
先ほどのアキレス腱の弾性エネルギーを活かす面から見ても、ふくらはぎを「固定する筋力のトレーニング」と「固定する使い方を覚えるトレーニング」に分けてトレーニングをする必要があります。
下記のトレーニング動画は現在作成中ですので、今月末までにはアップロード致します。
①トレーニング前の足首可動域確認、②「ふくらはぎとアキレス腱の筋力トレーニング」と③「ふくらはぎを固定した状態のトレーニング」
(ここの動画は今月末にアップロードします。)
まずはトレーニング前に足首の可動域チェック
『ウォームアップ』
ウォーキングやエアロバイで10分~15分行いしっかりと身体を温めましょう。
『筋力トレーニング(筋力、前腿とお尻、裏もも)』
【前腿、お尻、裏腿】
・スクワット
・シングルレッグスクワット (初めは安定したものにつかまりながら行う)
・クックヒップリフト (腰に負担がいかず、お尻を重点的に鍛えれる種目)
・ルーマニアンデッドリフト(ヒンジ動作の習得)
・シングルレッグルーマニアンデッドリフト (動作のトレーニングになる)
『回数の目安』
8~15回を目安に2~3セット行う。
綺麗なフォームを意識して、ゆっくり行い筋肉に刺激を入れる。
(しゃがむ時は2~3秒程かけてゆっくりしゃがみ、上がる時は1秒ほどで上がるようにする。)
初めは自分の体重でトレーニングを行い、慣れてきたら重量をダンベル1kgずつ増やして行う。
『筋力トレーニング(ふくらはぎ)』
・カーフレイズ (初心者向け)
・シーテッドカーフレイズ (初心者向け)
・シングルレッグカーフレイズ (中級者向け)
15~20回を目安に2~3セット行う。
綺麗なフォームを意識して、ゆっくり行い筋肉に刺激を入れる。
(しゃがむ時は2~3秒程かけてゆっくりしゃがみ、上がる時は1秒ほどで上がるようにする。)
初めは自分の体重でトレーニングを行い、慣れてきたら重量をダンベル1kgずつ増やして行う。
ここまでは「筋力トレーニング」です。
次は「実際の筋肉の動き」を鍛えましょう。
ふくらはぎを固定したトレーニング(動作)
【注意事項】
※ このトレーニングは地面に足裏が全部ついた状態で片足スクワットやブルガリアンスクワットが8~10回程できる筋力、シングルレッグデッドリフトが安定して行えるバランス力、足首の十分な可動域があった上で始めてください。
十分な筋力や可動域がない方は怪我をしやすいので行わないよう注意してください。
筋力トレーニングとは別の日に行う事。
『動画』
①ヒールフロートスクワット (垂直方向)
②○○ヒールフロートスクワット (垂直方向)
③○○スクワット (垂直方向)
④○○スクワット (垂直方向)
⑤〇〇ランジ (水平方向)
⑥○○ランジ (水平方向)
『意識するポイント』
必ず足は固定する事。踵を浮かせているので、動作をする時に踵が下に下がらないように注意する事。踵が下がるとアキレス腱が伸ばされ過ぎ怪我に繋がるので、必ず固定を意識。
固定できず安定しない場合はエクササイズを中断し、足裏全体が地面に付くエクササイズとバランスエクササイズを行い「基礎筋力とバランス力」を付けましょう。
『トレーニングの目的』
このトレーニングでは「実際の歩行や走り、ジャンプ動作の動き」のように足首を固定したまま、股関節の力で地面を押す動作が可能なトレーニングです。
更には「固有受容感覚」といった自分の身体の位置や動きを感じる能力を鍛える事ができ、足首を適切に固め、動作の制御能力を鍛える事ができます。
つまり足首を固めたままの身体の動かし方を覚える事ができます。
②と⑥のツイストリアフットフロートスクワットでは、背中とお尻の連結も高める動きも入れていますので必ず1個目のフロートスクワットが安定して行えるようになってから、次のレベルへ移行しましょう。
これは「動き」のトレーニングになるので、「筋力」のトレーニングとは分けて考えてトレーニングしましょう。
『足首ストレッチ(クールダウン)』
ストレッチ動画 (ふくらはぎ、後脛骨筋、前脛骨筋、足底腱膜、大腿四頭筋、お尻、ハムストリング)
「筋力」と「動き」のトレーニングをしっかりと理解するために下記の記事をお読みください。▼
「ファンクショナルトレーニングとは?一般的なトレーニングと何が違う?ファンクショナルトレーニングの5原則」
最後に
今回は足首周りを固定する事で、アキレス腱を活かせるという事を紹介しました。
必ず「筋力トレーニングは個人の目標に応じた筋力向上の目的」、「動作のトレーニングは動作の質を向上させる目的」と分けてトレーニングする事を心がけましょう。
しかし動作をする時の意識は身体の末端(手や腕、膝下)に向けるのではなく、身体の中心(体幹、股関節)から地面に力を伝える意識をするべきなのでそこは注意が必要です。
そして最終的には無意識の状態で正しい動作ができるのを目標にトレーニングしていきましょう。( ^o^)b
ではまたの投稿をお楽しみに~ノシ
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